ワキガの治療
現状、ワキガを根本的に治すための最も有効な手段は、手術によってアポクリン線を除去することです。
しかし手術となればそれに伴うリスクや費用、ダウンタイムなどを考えて躊躇する方も少なくないでしょう。ここでは病院で受けられる様々な治療法を、手術を含めてご紹介します。
ワキガ治療は何科で受けられる?
本当にワキガなのかどうかを診断してもらったり、その後必要であれば治療を受けたりするには何科を受診したらいいのでしょうか。
ワキガ・多汗症専門を謳っているクリニックもありますが、数はそれほど多くありません。
一般的には皮膚科や形成外科、美容外科・美容形成外科などで診てもらうということになるでしょう。
女性の方で陰部のワキガとも言えるスソガ(スソワキガ)、胸のワキガであるチチガについても一緒に相談したい場合には婦人科という選択肢もありますが、実際にスソガやチチガだと診断されてからの治療はやはり皮膚科や形成外科などで受けることになるのが一般的です。
皮膚科
まず本当にワキガなのかどうなのかがはっきりしていない場合にお勧めしたいのが皮膚科の受診です。
自身でワキガだと思っていても実際にそうではないケースは少なくありません。
問診や脇に挟んだガーゼのニオイを確認するなどして、ワキガであるか否か、もしワキガであれば程度はどのくらいなのかを調べます。
皮膚科で行われる治療は抗コリン剤などの飲み薬や塩化アルミニウムなどの塗り薬、薬用石鹸などの処方によって「発汗を抑える」「消毒殺菌する」といったことが中心となります。
食事指導なども受けられるので、ワキガが疑われる子供さんの受診も勧められます。
ワキガの状態が軽ければ、皮膚科での治療でも十分に対処できます。
リスクや体への負担が比較的小さい治療法が中心であること、正しい対処への足がかりとなりやすいこと、多くの治療法で保険の適用が受けられることなどが良い点です。
重度のワキガであれば手術という選択になることもあるでしょう。
その皮膚科で対応できなければ形成外科や美容外科などに紹介状を書いてもらうことができます。まずは本当に手術が必要なのか、皮膚科でよく相談してみましょう。
形成外科
形成外科で行われるのは皮膚科で受けられるような温存療法ではなく、手術による治療が中心になります。
ここでは形成外科でよく行われる手術をご紹介します。
剪除法(せんじょほう)
現在ワキガの治療として一般的に行われている手術がこの剪除法です。執刀医が自分の目で確認しながら脇のアポクリン腺と皮脂腺を取り除いていくというもので、手術には2時間程度を要します。
術後は患部をしっかりと固定した状態で過ごします。数日間は毎日通院し、一週間程度で抜糸という流れですが、医療機関によっては入院を勧めるところもあります。
いずれにしても、両脇を手術した場合には1週間程度は仕事や学校を休むことになるでしょう。
この剪除法は保険の適用となります。両脇の手術なら5万円程度(入院する場合はこれにプラスして入院費)。傷跡は3~5cm程度のものが1~2本残ります。
しばらくすると目立たなくはなってきますが、脇毛を処理する女性の場合は気になってしまうかもしれません。
切除法
切除法は剪除法が主流となる前によく行われていた方法です。文字通り脇のムダ毛が生えている部分の皮膚をアポクリン腺ごと切除するもの。
切り取る箇所が大きいだけあって確実性は高く、保険も適用されるのですが、体への負担や残る傷跡は決して小さなものではありません。場合によっては運動障害が残ってしまうこともあります。
術後は患部をしっかりと固定しなければならず、1週間程度の入院が必要となります。抜糸後もトラブルが起こる可能性があり、あまりお勧めはできない方法です。
美容外科・美容形成外科
美容外科や美容形成外科でもワキガや多汗症の治療を受けることができます。美容面を重視しているだけあって術後の傷跡についても十分考えられているのは女性にとって大きなメリットでしょう。
ただしこちらでは保険の適用とはならない治療方法が多く取り入れられているため、治療費が高価になりがちです。事前のカウンセリングなどでよく相談して、納得のできる治療法を選択するようにしてください。
ボトックス注射
プチ整形でよく使用されるボトックス注射は脇汗を止めるのにも有効です。
神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑制することで発汗を抑えます。手術ではないので短時間で済み、傷跡は残りません。
ダウンタイムもなく、注射を受けた後すぐに帰宅することができます。1度のボトックス注射によって効果は半年程度続きます。
ボトックス注射は医療機関の判断によって保険の適用となるケースとならないケースがあります。
保険が利けば1回につき3万円前後、適用されなければ8~10万円程度の料金となるでしょう。保険適用外の場合には麻酔をした上で注射を受けることもできます。
電気凝固法
電気凝固法は針による脱毛方法を応用した手法です。局所麻酔をした状態で脇に針を刺し、電気によってアポクリン腺を凝固させて発汗させないようにします。
メスを入れないので傷が残らないため、手術をするのは抵抗がある方に喜ばれています。しかし電気凝固法は軽度のワキガの方に向く方法で、重度の方にはほとんど効果がないと言われています。
治療は30分程度で終わり、ダウンタイムはありません。ただ、数回~6回程度の治療が必要。保険の適用外なので費用は25~40万円ほどとなります。
吸引法
脇の下を1~2センチ程度切開してアポクリン腺を吸い出す方法です。剪除法と比較して切る部位が小さいため、負担が小さく、両脇を手術しても1時間もかかりません。
この吸引法を改良した超音波吸引法も行われています。
吸引法は軽度のワキガに適した方法で、重度の方には向きません。またアポクリン腺をすべてきれいに取り除くことは困難で、取り残しが生じることもよくあるため、吸引法は勧めないという医師の声もよく聞かれます。
吸引法は保険の適用外のため、費用は25~30万円ほどかかります。
ミラドライ
電磁波を照射して汗腺を破壊する方法で、マイクロウエーブ法とも言われる手法です。
メスを入れないために傷跡が残らず、体への負担も少ない最新の治療法です。ミラドライは保険の適用とならず、両脇で35~50万円程度とワキガの治療法では高い部類に入ります。
ミラドライは軽度~中度の方に適しており、重度のワキガにはあまり効果がないという声も少なくないようです。
手術は最良の治療法?
完治を目指すのなら現状としては手術のみがワキガの治療法だと言えますが、思い切って手術を受けても100%完治するわけではないのが考えどころです。
執刀医の技量次第ではアポクリン腺が残ってしまうケースがあるからです。
それでもニオイはかなり緩和されますが、場合によってはワキガが再発するケースもあります。
それでも精神的な苦痛が大きい場合や治療を急ぐ場合には手術はきわめて有効な手段だと言えるでしょう。
当然のことながら自臭症のように実際にはニオイがない、もしくはあっても非常に少ない場合には、せっかく手術を受けても大きな効果は期待できないと言えます。
自臭症の場合には多汗症同様、ボトックス注射が大きな成果を上げることが多いようです。
このように、ワキガの治療法にはいろいろな方法があります。担当医とよく相談して、予算やニーズに最も合った方法を選ぶようにしましょう。